今回は、味の素の工場見学に参加した時のことを書いてみたいと思います。(一般の見学コースに申し込んで参加させてもらったものです。)
川崎事業所は、神奈川県川崎市の鈴木町(すずきちょう)にあります。
京急線 鈴木町駅で降りると、駅前そのものが味の素本社のような存在感です。
それというのも、鈴木町駅の名前の由来は、味の素の創業者である鈴木三郎助(さぶろうすけ)氏に由来しているとのこと。
川崎工場は、1914年に、味の素を作るためにたてられたそうです。
味の素とはグルタミン酸ナトリウムのことで、昆布と同じうまみ成分を含むもの。
これを、発酵法によりサトウキビの糖分から作っており、元は池田菊苗博士が発見したものです。それを味の素として、創業者である鈴木三郎助氏が発売しました。
川崎工場は3大工場のうち一番歴史があり、広さはなんと4駅分にもまたがっているそうです。
町は味の素とともに発展してきたのでしょうか。日立ではなくトヨタのパターンですね。それにしても4駅分の広さとはすごい。
工場見学に参加するには、4日前までに事前予約が必要です。
ほんだしコース、味の素コース、Cook Doコースの3つのコースがあり、私はCook Doコースに申し込みをしました。
いずれも無料ですが、映像見学と工場見学、味わう体験がついて、お土産までいただける、豪華なものです。
小学生以上が対象とのことで、中には大人だけのグループもいましたが、多かったのは親子連れでした。一人参加の私は多少浮いていました。笑
やはり、展示や解説などは、子供たちむけにわかりやすい説明になっているな、と感じました。
見学当日は、集合時間の10分前までに、「うま味体験館」という建物の1階にある見学受付に赴きます。各見学コースごとにリボンの色が違う入館カードをもらいます。
それを首からかけて、まずはシアタールームで映像を見学します。
「うま味体験館」には「アジパンダショップ」があり、いろいろな味の素製品を少しお得に買うことができます。中には地方限定の商品などもあるようです。
アジパンダショップまでは写真撮影OKですが、ここから先、見学コース中の撮影は禁止です。(最後の調理と試食は写真撮影OKでした。)
シアターは、360度映像というふれこみ通り、部屋全体がスクリーンとなり、鮮やかな映像と質の高い音響効果でした。時に畑の中にいるような気持ちになり、時に壁に映し出される商品の映像に目が釘付けになり、あっと言うまの十数分間です。
味の素をどのように作っているかや、工場で作っている製品の種類など、丁寧にわかりやすく説明されていました。
その後、見学者の一行はシアターを出て、バスに乗り込みます。
このバスで、うま味体験館前から出発し、工場の敷地内に入ります。
機密を守るためや、安全衛生のためなどいろいろ理由はあるのだと思いますが、一般の見学者が歩いて工場の敷地内に入ることはできず、見学の際はバスごと入場することになります。
バスに乗っている時間はわずか2-3分で、すぐに各見学コースの工場棟前に着いて、下車します。
私が参加したのはCook Doコースだったので、ホイコーロウ、マーボナスなどのCook Doの調味料を作っている、クックドゥー工場ラインを見学しました。
見学コースは工場から見ると上階の通路のようになっており、ガラスごしにラインを眺めることができます。
説明のポイントは全て壁の説明パネルや、テレビモニターの映像などで予めしっかり準備されており、見学者は案内の方について歩きながら説明を聞きます。
こちらの工場では、パラレルロボットの導入によって、生産量が以前の1.4倍になったとのこと。
また、環境にも配慮した工場で、例えば水使用量は従来の30パーセント削減されているとのことでした。
写真がないのですが、工場はとても清潔で、遠目で見た限りチリ一つ落ちていない雰囲気です。
目に映る製造ラインはほぼ機械で、人手作業はほとんどなく、あっても機械が正常に動いているかのチェックや、機械がうまく動かなかった時のフォローなどという印象でした。
工場内は衛生管理や品質管理が非常に行き届いているとの印象を受けました。
また、とても高そうな高性能の機械が沢山導入されています。
箱を吸盤みたいなものでくっつけて浮き上がらせて並べ替える、ロボットアームの動きの速さといったら。人間の何分の一かというような目にも止まらぬ速さで動いていました。
製造した製品を格納する立体自動倉庫には、全ての製品が一度格納されるそうです。
これは、東京ドーム1つ分の広さもあるとか。2万パレット、80万ケースを収めることができるそうです。
ここでは、積み付けロボットが、効率的なつみつけを計算しています。
それだけ広大な工場を僅か50人、事務所は20人のみで運用しているとのお話でした。
あとから考えると不思議な気がしたのは、食品工場にもかかわらず、見えるのはアルミ包装とか箱とかだけで、食品らしき姿はほとんど目にしなかったことです。
と言っても、その部分はテレビモニターの映像で補足説明がありました。
クックドゥの材料は、薬味系の野菜と、豆板醤などですが、材料のにんにく、しょうがは冷蔵庫で保管していて、調味料作成工程は工場の2階にあるそうです。
食べ物は、傷んだり腐ったり虫がついたりして当たり前な気がするのですが、そういった変質要因は排除し、「均質」な製品作りと安定供給が実現されているということです。
これまで他にも幾つかの食品工場見学をさせていただきましたが、大規模食品製造業は「工業」として行われています。
原材料の活用や作業効率などあらゆる面で徹底的な効率化や高度化が実現されていると思います。
品質や効率は素晴らしいのですが、一方で、効率化の効果が一事業者内でのみ実現されていることは、少し気になりました。
インターネットについて、ティム・バーナーズ=リー先生が言っていたこと(facebookやgoogleが巨大なクローズドな空間を作り上げて情報を囲っており、それはもはやオープンな空間とは言えない)と同じことが、食品製造や流通小売の世界でも起きているように思えるのです。
生産と消費が遠く隔てられ、間に大規模流通が挟まり、プロセス間が乖離した状況では、生産者は機会損失を発生させないよう多めに作らざるをえず、余剰生産物が発生するのは必定なのでは、と心配になります。
作ったものを捨てないようにしたり、廃棄物をコンポスト化するなどして有効活用するといった事後的対策では、やはり根本解決にはならず、そもそも作りすぎないようにすることこそが、世の中全体の食品廃棄を減らすことに繋がるのではないでしょうか。
そのためには、経済圏をなるべく小さくして流通を縮小することが一つの解決策になりうるのではないかと考えます。
地産地消、自家生産、近隣での物々交換。
なるべく目の届く範囲で作って、使い切ること。
便利な方、便利な方に身を委ねるだけでなく、そういった生産と消費のサイクル・スタイルを見直したり取りもどすことも、今後は必要になってくるのではないかと思っています。
巨大資本が投じられ、全国に日々均一な品質の製品を安定して送り届ける巨大な工場を見学し、逆にそんなことを考えました。
工場見学の後は、またバスに乗せてもらい、工場の敷地を出て先ほどの建物に戻りました。
明るくて綺麗な調理実習室で、クックドゥを使って美味しいホイコーロウを作る方法を習いました。
可愛い赤いエプロンと三角巾を借りて、調理実習です。
クックドゥコースの体験内容は、ホイコーロウ作りと試食でした。
4-5人のグループに分かれ、工程を分割して調理をします。
ポイントは、先にキャベツを炒めた後、一旦皿などに出しておいて、肉を炒めた後にフライパンにもどす、ということらしいです。キャベツシャキシャキの法則。
ミニおにぎりもついて、楽しく試食をいただき、写真撮影もして、今日の見学は終了です。
最後に、回鍋肉の素と、ほんだしと、味の素ミニボトルの入った、お土産まで頂いて、解散しました。
全体で約90分の見学コースでした。
最後に、「アジパンダショップ」にいたアジパンダくんをパチリ。
本当は記念に人が一緒に撮るものだと思いますが、私は一人だったのでアジパンダくんの写真だけです。
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