2016年9月3-4日にフィンランドのヘルシンキで行われたイベント「Helsinki Design Week」に、廃棄食材を利用したレストランが臨時食堂を出店していましたので、今回はその時の様子をレポートしたいと思います。
フィンランドでも、他の欧米諸国と同様に、廃棄食材の減量やフードシェアの動きが広がってきています。
フィンランドのフード系スタートアップの一つであるFROM WASTE TO TASTEという団体が、廃棄食材を活かしたLOOPという店名のレストランを運営しています。
私たちが訪ねた日は、運悪く臨時休業でしたが、徒歩30分ほどの場所で開催されていたイベント「Helsinki Design Week」内に臨時の食堂が出店されていました。
LOOPやFROM WASTE TO TASTEについては、日本語記事ではそれまで見たことがなく、海外記事検索で発見しました。
私たちの欧州視察・珍道中の例に漏れず、ドイツの後フィンランドに行くと現地で決めてから、慌ててネット検索して探し当てた事例でした。
記事によると、レストランLOOPは少し前の8月19日にオープンしたばかりとのことで、紹介記事も一つしか発見できず不安もありましたが、とにかく行ってみることに。
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前日9月2日の18時便でベルリンからヘルシンキに飛び、ヘルシンキのヴァンター空港に着陸した時刻は21時。
時差がプラス1時間なので22時到着と、遅い時刻だったので、Airbnbでの宿泊は諦めてエアポートホテルに宿泊。
素っ気ないエアポートホテルながら、ミニキッチンがついて、濃いブルーの陶器の皿が備えられた部屋は、前日空港で、案内板などもおしゃれでわかりやすく、さすがフィンランドだなと感じた感想を裏切らない、デザイン性を備えた部屋でした。
そんなキッチンを利用する間もなく、翌朝の9月3日は9時に起床し10時にホテルをチェックアウト。
バスに乗るためにデイチケットを買おうと思ったところで、現金を持っていないことに気づく・・・。私たちってこんなパターンばかり。
ホテルに戻り、ロビーにATMがあるか聞いたら、残念ながらないとのこと。ホテルのロビーにはATMがあって当たり前かと思っていましたが、国や文化によって違ったのかも。前日、空港に着いたところでお金をおろしておくとか、前もって備えないとダメだったなと反省。
とは言え、徒歩5分のショッピングモールに行けばATMがあるとのことで一安心。重い荷物を背負ったままバス停を背にして歩き、郊外型ショッピングモールへ。スーパーの駐車場にある、分別が徹底された資源収集場もチェックしつつ、店内に入り、無事にATMでキャッシングして現金を手に入れ、Kioskで交通デイチケットも購入できました。
そしてホテル最寄のバス停まで歩いて戻り、ようやくバスに乗車。ここまでで無駄に30分以上消費。やれやれ。
バスと電車を乗り継いで40分ほどで、お目当ての駅に到着です。そこから10分少々歩いて、湖のほとりにあるLOOPの住所地に到着。小さいながら、LOOPと書かれた看板も発見。
しかし、どう見てもそこは工事中で、営業している気配がない。。。
それまでにも、ネット上の情報を頼りに訪ねて行くと、表示された住所では既に営業していなかったり、結局目当ての場所が見つからないという事態に何度も陥っていたので、「またか・・・」と膝が折れそうになりました。
しばらく辺りをウロウロしたり、勇気を出して建物のドアを開けたりしてみるも、手がかりは見つからず。
そこに、建物から出てきた年配の一人の女性。
「すみません、ここにLOOPという名前のレストランありますか?営業していますか?」
聞いてみると、彼女は英語ができない模様。
それでも、フィンランド語でしきりに親切そうに何かを話してくれます。
彼女が、ゆっくり言葉を選びながらの英語で教えてくれたところによると、
「いつもは、ここでやっているんだけど今日はお休み」
「今日は、別のところでやっている」
そこで、場所を聞くと、「カアペリ」と言って、「kaapelitehdas」という綴りを教えてくれました。
googlマップで調べてみると、歩いて30分ほどの場所。ここまで来たら、歩くしかない。
先ほど降り立った駅前を通りすぎ、反対方向へ歩く、歩く。
大通りなのに人通りがほとんどなく、閑散とした道中に不安を覚えながら、ホテルをチェックアウトしてきてしまったので2週間分の荷物が入ったバックパックを背負いながら、歩く。
行ってみるとそこにはかなりの人が集まっていました。
駅前や道中の静けさからは想像がつかないほどの、賑わった雰囲気。
貼ってあったポスターで、デザインウィークをやっていることのだとわかりました。
実は前日にfacebookイベントで今日明日の人気イベントとして表示され、チェックしていたものの、面白そうだけどフードと関係ないねと、来るつもりがなかったイベントです。
混雑のため入場制限がかかっており、20分ほど並んで12:30頃に会場内へ入れました。入口にはスーツの黒服さんがいて、入場者を仕切りっており、入口前には幾つかのフード屋台が出ています。
会場内に入ると、椅子や花瓶や照明器具といったインテリアグッズや、バッグや洋服などのファッショングッズを並べたショップがぎゅう詰めで、お客さんもひしめき合う熱気。
わくわくしてしまい、とりあえずショップを見て回りながら、LOOPを探すことに。
会場自体も天井が高くてコンクリ打ちっ放しの吹き抜けの空間で、おしゃれ。売っているものも、歩いているお客さんも、みんなおしゃれ。
ついつい買い物客の視点でショップを見てしまい、時間が過ぎゆきましたが、ハッと気づき、奥の2階を見上げると、そこにLOOPのフラッグが!
休業中の常設店舗に行って工事中だったり、デザインウィークに目を奪われて目的を忘れそうになったりしたものの、最終的には奇跡的に、目的のフードロス対策事例に辿り着けたのです!
階段を上って2階に着くと、いかにも臨時店舗のようなしつらえで、入口のところにレジがあり、奥が客席になっています。
テーブルをかぎ型に並べて、白黒のドット模様のクロスをかけた上に鍋やフードケースがあって、スープやコーヒーやサラダの配膳をしています。食器は紙製のようです。
レジ横にはいろいろなフルーツの盛られた透明アクリルのカゴがあり、横の小さいバケツには可憐な黄色い花も生けられていて、モノトーンのインテリアに彩りを添えています。
客席にも黒地のテーブルクロスがかかり、一輪挿しに花が飾られて、コンクリの床や事務机・椅子の殺風景さをおしゃれに見せています。
メニューはシンプルで、スープ、サラダ、コーヒー、ケーキ、ソーダの単品とセットのみ。
・SOUP・EXTRAS 6ユーロ
・BEGGIE BALLS・SALAD 6ユーロ
・SOUP AND BEGGIE BALLS 10ユーロ
・COFFEE 2ユーロ
・CAKE 2ユーロ
・COFFEE-AND-CAKE 3ユーロ
・SODA/SPARKLING WATER 3ユーロ
私たちはランチをとろうと思っていたので、スープとベジーボールのセット(1人前10ユーロ)を注文してみました。
レジ担当の男性によると、この食事は全て捨てられるはずだった食品で作っているとのこと。レジ横のボウルに盛られたフルーツは取り放題で、それらも全て捨てられる運命だった果物たち。飾られた花もそう。これらの食品は幾つかのスーパーマーケットから貰ってくるとのことでした。
スープは、クリームシチューみたいな具なしの白いクリーミーなスープ。あっさりしていたので、牛乳というより豆乳が使われていたのかも。
スープは店員さんが紙の器に注いで渡してくれるのですが、柔らかいパンを刻んだクルトンとかぼちゃの種が器に山盛りに盛ってあり、お客が自分でスープに好きなだけ入れられるシステムになっています。
ベジーボールズというのは、カレー味で薄味の少し崩れやすいファラフェルに、ヨーグルト味でクミンなど幾つかのスパイスの入ったソースがかかっているものでした。付け合わせは、ぶどう酢のようなフルーティな酢を使ったマイルドなキャベツのコールスロー。
いずれも野菜中心で、強い主張のない優しい味でした。
店のお客さんたちは、見たところでは買い物のついでに普通の食堂として食事やお茶に利用しているのかな、という雰囲気。
こんなふうに、廃棄食材をうまく利用して、普通に美味しいものを食べさせる店としてお客に受け入れられ、それがレストランビジネスとしても回るのであれば、理想的だなと感じました。
今回の欧州視察では、デンマークでもイギリスでもことごとく廃棄食材レストランに振られ続けてきたので、ようやくレストランの事例を体験でき、感慨もひとしおでした。
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食事の後は、デザインウィーク会場をもう一度ぐるりと見てから引き上げることに。
会場ではおしゃれなものがたくさん販売されていたのですが、残念ながらバックパッカーは家具とかラグとかちょっとかさばるバッグさえも、買うことができないので、涙を飲んで写真だけをお土産に、会場を後にしたのでした。
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